日本神話 川副武胤
1971年発刊。こちらは1978年の第七刷です。かなり読み応えがあります。現在入手困難の品です。40年以上前のものですので、ヤケやシミはあります。

以下、あるブログより書評を抜粋
日本神話といえば、712年に完成した『古事記』、そして720年に完成したと伝えられる『日本書紀』にある「神代の巻」を想い出す。むろん、8世紀の初葉に編まれたこの2編の記紀が日本神話の全容を語るものではない。たとえば、出雲で有名な『風土記』は、和銅6年（713年）の政府命令により各国（国内における）の産物、地名の由来、旧聞異事などを上進する、いわば報告書だった。このうち、わずかに現存する『出雲風土記』だけが、記紀にかかわる神名を遺していた。また、奈良時代以前の歌を収めた『万葉集』にも、微妙に神が登場することがある。さらに、日本神話の独自性を縄文時代と弥生時代の国つ神、天つ神と時期区分してとらえる考え方もある。しかしこの独自性については、根拠の検討が弱いとする向きもある。要するに、日本の神々の物語を体系的に収めているのは、『古事記』と『日本書紀』以外にはないということだ。あったとしても記紀の亜流であるか、原初的すぎて話にならない。このような認識で、本書は『古事記』・『日本書紀』に対象を限定して、日本神話を論じていく。川副武胤（1922-1993）は、記紀の成立の構造論を開陳する。その構想の中で、神々の果たす役割はどういったものか、その解明を本書の意義にすえた。
いや、これは大変な課題だといわねばならない。日本におけるすべての神話と登場するすべての神々を、神話の構造全体の中で説話として解明することは、今から35年前の神話学の試みとしては、相当に意欲的だったのである。およそ、神々の祭祀されたとする論の論証は独断的なものが多いし、いかようにでも反論できる。それは科学的ではないからだ。川副がこのように考え、記紀神話それ自体の厳密な研究に従事する理由はシンプルなのだが、膨大な謬見の再検討を迫られる挑戦ともいえるのだ。