「カーテンが降りて」
レンデル傑作集1
　訳者: 深町 眞理子　他

　６歳のある日、少年の身に何が起こったのか？
　家を出て戻るまでの数時間、まるでカーテンが降りたように記憶が空白なのだ。
　母親も周囲も、少年は知らない《男》につれだされたのだという。
　それから１２年後、思い出の場所を訪れた男が見るものは、
ー「カーテンが降りて」
　子供と母親、夫と妻、恋人同士、女友達、肉親同士、そして人間とペット…様々の関係に生じる愛憎の齟齬が生む残酷な悲喜劇を描きだし、レンデル・タッチを湛能させる傑作集。
　アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞受賞の表題作ほか１０篇を収録！

誰がそんなことを
悪い心臓
用心の過ぎた女
生きうつし
はえとり草
しがみつく女
酢の母
コインの落ちる時
人間に近いもの
分裂は勝ち
以上

　巻末 解説　小池真理子氏
〈中略〉レンデルは、日常の錯綜が隠された人の狂気を誘発する、という現実を直視する作家である。
　異常と正常の狭間で、息苦しくなるほど自分の幸福を求めながら生きている現代人。
　その複雑な心の営みが、ともすれば些細なことで均衡を崩し、本人ですら思いもよらなかった悲劇的な運命の連鎖を生み出す。彼女はそこに執拗に目を向けているのだ。
　だから彼女の描く犯罪者たちは、金銭欲や怨恨、嫉妬などという、これまでミステリにありがちだったおさだまりの動機とは無縁である。
　動機は常に不明瞭な、言葉で言い尽くせないほど複雑なものとして描かれる。
　その迷宮のような動機の連鎖が、メビウスの帯のごとく連なり、終わることのない皮肉な運命を描くのに役立っているというわけだ。
〈中略〉登場人物全員が主人公であり、狂気の誘発者であり、同時に皮肉な運命の創始者、被害者である。
　そこに奇妙なリアリティを感じるのは私だけだろうか・・

　ワタクシ思うに、“ノンシリーズ”ものに見られる“サスペンス”感は若干薄れますが、短篇小説家としてのストーリー・テラーの才能、力量は秀逸♪
　さあ、読んでみればお分かりかと♪
　
　カバーに軽微ながらスレ、汚れがあります♪
　古書レベルとしての本の状態は概ね良好かと♪