※本書の「はじめに」引用　腹部雄樹

私たちの生活の中で、ウェブサイトの担う役割は多様化し、ウェブ制作者にはより専門性の高い技術が求められるようになりました。それに伴い、ウェブ業界では年々分業化が進んでおり、これからウェブサイトの制作をはじめたいという人にとっては、何から勉強をはじめていいかわからない、ある意味では難しい状況だと言えます。

しかしどんな物事にも基礎があります。ニューヨークで歌舞伎の公演を成功させるなど、次々の常識を打ち破り、イノベーターとして知られたある高名な歌舞伎役者が次のようなことを言っています。「型があるから型破りという。型がなければそれは形無しである」。つまり一見型破りに思える挑戦も、歴史に残る偉業も、全てはしっかりとした基礎の上にこそ成り立つものであるということをこの言葉は教えてくれます。

本書はウェブ制作の基礎であるHTMLとCSSという2つの言葉を使い、一つのサンプルサイトを作ります。初めてウェブ制作に触れる方にも理解できるよう、できるだけ丁寧で分かりやすい解説を心がけました。入門書としてはボリュームが大きく、時には退屈な反復作業が続くこともありますが、本気でウェブ制作者を志すには必ず役の立つ内容になっています。
技術面では、フレックスボックスやグリッドといった実際に制作現場で頻繁に使用するレイアウト手法や、今やウェブ制作に欠かせない知識である、スマートフォン表示に完全対応するレスポンシブルデザインを基礎からしっかり学べます。

また、ウェブサイトを作る楽しさを感じてもらえるようサンプルサイトの動きや、かっこよさにもとことんこだわりました。本書を読み終えサイトを作り上げた後には、ぜひどこの楽しさや面白さを感じたかを振り返ってみてください。それは皆様が次に進む道のヒントになるはずです。

本書の前版は私の想像以上に多くの方の手に届き、先日この本を読んでウェブ制作の楽しさを知りエンジニアになりましたという方に出会いました。この本の入り口に、より高度な技術を身につけられ、今では私にとって欠かせない重要なパートナーとして一緒に仕事をしていただいていますその方のように、これからウェブ制作者を志す皆様にとって、はじめの一歩を踏み出す一助けとなれば、これ以上の喜びはありません。いつか制作現場でお会いできる日を楽しみにしています。