『氷壁』は、井上靖の長編小説。1956年2月24日から1957年8月22日まで朝日新聞に連載され、1957年に新潮社から単行本が刊行された。

切れるはずのないナイロンザイルが切れたために登山中に死亡した友人の死を、同行していた主人公が追う。1955年に実際に起きたナイロンザイル切断事件の若山五朗、北鎌尾根で遭難死した松濤明、芳田美枝子（奥山章夫人）ら複数のモデルがいる。友情と恋愛の確執を、「山」という自然と都会とを照らし合わせて描いている。」『ウィキペディア（Wikipedia）』



前穂高の難所に挑んだ小坂乙彦は、切れる筈のないナイロン・ザイルが切れて墜死する。小坂と同行し、遭難の真因をつきとめようとする魚津恭太は、自殺説も含め数々の憶測と戦いながら、小坂の恋人であった美貌の人妻・八代美那子への思慕を胸に、死の単独行を開始するが……。

完璧な構成のもとに、雄大な自然と都会の雑踏を照応させつつ、恋愛と男同士の友情をドラマチックに展開させた傑作長編。



「この劇的な基軸は、さらに一般化すれば、自然対人間、永遠対歴史あるいは一国の運命といった形に広げて考えることが出来るものであり、事実井上氏の諸作をつらぬく根本的な主題は、これ以外のものではない。自然と人間との、また永遠と個人の生命との触れ合いの緊迫した一瞬を、描きとめることに、この作家のたゆまぬ多産な制作行為の中核が存する。」

――佐伯彰一(文芸評論家)



新潮社・昭和３２年１０月初版発行の井上靖「氷壁」函・元帯付きです。装幀は風見武秀、扉・表紙文字は棟方志功です。函と帯にヤケが少しあり、本文余白部分にシミがあるページがあります。（画像６）。書き込みや蔵書印などはありません。「氷壁」解説小冊子とスリット（売上票）が付属します。パラフィン紙を掛けていますが、撮影のため一部外しています。６７年前の古書であり美本ではないことをご理解の上、購入の検討をお願いいたします。