ベートーヴェン

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調　作品61



カール・ズスケ(ヴァイオリン）

指揮：クルト・マズア

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団　　LGO

録音：1987年9月ライプツィヒ新ゲヴァントハウス（デジタル）



若くしてゲヴァントハウス管のコンサートマスターとなり、東ドイツを代表するヴァイオリニストとして活躍したズスケによる、真摯なベートーヴェン。マズア＝ゲヴァントハウスの重厚なバックアップが支えるその音姿は、崇高な頂きを拝みみる修道士のよう。 録音が非常に良い。ズスケのヴァイオリンがしっとり穏やかで耳に快く聞こえる。



ベートーヴェン、ブラームスの骨太の演奏を好むなら、やはり旧東ドイツのオケの演奏がよい。ズスケの演奏はきらびやかではないが墨絵のような演奏、楷書のような演奏だと思う。ゲヴァントハウス管も重心が低く、「ドイツの音楽だな～」と聴いた。久しぶりに良いＣＤに出会った思いだ。残響は多め。残響の豊かなホールで聴いていると思えば、こういう録音もさして気にならない。しかし、ＣＤ化にともない、レコード時代以上に録音技術者のセンスが再生メディアの質に大きな影響をもたらすと感じる今日この頃である。



テンポ設定が素晴らしく、この曲の最高の演奏であろう。ライプツィヒのオケも、ハンガリア舞曲集と同じく、最高の音色で堂々と、暖かく独奏を包み込み、一体となっている。これは、ズスケへのオケからの最高の賛辞であり、当然、コンマスとのピッチも、息の合い方も自然にピッタリはまっている。他の演奏では、退屈だったり、表情付けが濃すぎて聴き疲れてしまう所が、この演奏では全くなく、クルマの中で何十回繰り返し聴いてもイヤにならず、益々聴きたくなる演奏なのだ。残響の多い録音も、この曲にはふさわしい。すっきりとしているが、伸びのある、ヴィブラートの少ないヴァイオリンソロは、凜としていて、まさにドイツ人のベートーヴェン。これ以上のテクニックはいらない、作曲者の望んでいた通りの演奏がこれではないかと思わせる、自然さ・素朴さ・やさしさが、地味なこの曲には欠かせない。



国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し 9



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