#テキスタイル #タイル #家具 #建築

#ケルムスコット・マナー

2018年 発行 全176ページ

状態：中古・概ね良好



■本書序文■

ウィリアム・モリスは芸術家・詩人・作家・思想家・社会運動家など、さまざまな肩書きで語られる19世紀を代表する英国の偉人です。

どの分野にも等しく限りない情熱を注ぎ、リーダーとして活動しましたが、本展では、デザイナーとしてのモリスに焦点をあて紹介いたします。



モリスの制作活動は、その時々の、住まい、学び、働いた場所と深いつながりをもっています。

幼少期を自然のなかで遊び過したロンドン郊外のエピングの森、

14歳で入学したモールバラ・カレッジ周辺の文化遺産に恵まれた環境、大学生活を送ったオックスフォードの中世を彷彿させる街並み。

いずれもがモリスの感性の育成に大きな影響を与えました。



モリスは結婚後の新居を、自身をはじめ仲間たちの手で建設することを計画、

赤煉瓦を美術的見地から応用したといわれる「レッド・ハウス」を完成させました。

レッド・ハウス建設が契機となり、仲間たちとモリス・マーシャル・フォークナー商会

(後のモリス商会)を設立、その後のモリスの装飾美術活動を大きく展開させることになります。



モリスの制作活動の拠点は、仕事の発展に伴い最適な地を求めて移り変わりました。

その各々の時代と制作した場を作品と対比し、また現存する風景と重ね合わせて視覚的にも捉えてみようとするのが、本展の大切な要素です。



最後になりましたが、本展の趣旨に賛同いただき、学術面から総合的に監修、

指導、助言を賜った藤田治彦氏に深い感謝の意を表します。

また、原風景への旅を先導する役をお引き受けいただいたのは、写真家・織作峰子氏です。

ファインダーを通して1世紀半以前のシーンを現代に甦らせる、同氏の絶大な協力なくして本展は実現しませんでした。



「生活の美」を説き、アーツ・アンド・クラフツ運動を先導したモリスの理念、

そし てデザインは、今なおわれわれの生活のなかにいきいきと息づいています。