1997年のハードカバーの初版本、第1刷、帯付きです(定価1648円)。表紙はビニールカバーで、やや日焼けがあるものの、破れなどはなく、中身にも書き込み等はありません。楽々メルカリ便で匿名配送します。



内容は奇想天外というか荒唐無稽というか、大変に面白い本です。パワハラ・モラハラ全開な小説で、今なら出版できないかも知れません。

裁判官だった主人公がコンピュータに置き換えられて解雇される等は、1997年ならSFですが、近年のAIの進歩で近い将来に実現するかも知れません。後半で興味があったのは（原子炉を個人で作ると言うのはSFとして）設計が黒鉛減速のウラン燃料炉なので、それなりにもっともらしい。ただ、文中では旧ソ連のチェルノブイリ型の原子炉と書いてあるものの、炭酸ガス冷却ということなので、日本だと東海１号炉（ガス炉）です。2011年に大地震が起きた、という前提も、今になってみればSFというより予言小説かも知れません。

斉藤家が移住を迫られる自衛隊基地の跡地に毒ガスが埋まっている、という設定も、最近のPFASによる地下水汚染を想像させます。更に、主人公が日本国家に対し「原子炉を暴走させ、東京を壊滅させる」という脅迫は、2011年の福島原発事故の後になって見れば、SFというより、未来を言い当てたとも言えそうです。

この本を買ったのは「核弾頭をどうやって入手したのか？」に興味があったからですが、ネタバレになってしまうので書きません。ただ、著者は原子力工学を勉強したことがうかがえて面白かったです。