購入時に付いていたパラフィン紙や月報はありませんが、新本に近いものです。



空の城

豪華客船クイーンエリザベス二世号を借り切って開かれたＰＲＣの開所式に江坂産業株式会社の河井武則社長、米沢孝夫副社長、江坂アメリカの上杉二郎社長が出席していた。ＰＲＣはカナダのニューファンドランド州政府が建設した製油所で、アメリカの実業家アルバート・サッシンのＳＮＲに経営を委託したもので、江坂産業はその子会社ＮＲＣと代理店契約を結んでいた。その契約交渉にあたったのは在米20年の上杉だった。石油部門への進出は江坂産業の悲願だったので、サッシンが持ち出した4200万ドルの無担保融資の条件も呑まざるをえなかった。社主の江坂要造は古美術品の収集狂で経営には口を出さないが人事権だけは手放さない。その社主の意向で上杉は資源担当の常務として日本に呼び戻される。石油事業は順調に推移するかに見えたが、やがてＮＲＣは第４次中東戦争の影響による価格の変動に従業員のストライキ、機械の不調などのアクシデントが重なって倒産、江坂産業もそのあおりを食って急激に経営が悪化していく。安宅産業の倒産という現実の事件に取材して総合商社の内実を描き切った企業情報小説の力作。

――松本清張事典より



「松本清張全集 49」

松本 清張

定価: ￥ 3107



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