1968年のアルバムデビュー以前からの楽曲提供から長い歴史と、その音楽的功績で、ファンだけでなく多くのミュージシャンからもリスペクトを集めているカナダ出身の女性シンガーソングライターの波乱万丈の人生と素晴らしい音楽の歴史を振り返ったドキュメンタリー作品です。
ライヴ映像やTV番組での演奏、インタビューが時代の流れとともに、とてもバランス良く、テンポ良く、分かりやすく構成されています。
演奏シーンは、かなり膨大な資料映像から集めてあり、最後まで飽きさせません。
インタビューは本人以外にも、彼女の音楽に深く関わったデヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、ジェームス・テイラー、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック等のインタビューも出てきます。
それにしても、ジョニには数々の恋愛遍歴があり、その音楽と密接に関わっており、しかも、彼女の中では、恋人よりも、音楽を優先させている事が分かります。
恋仲だったグラハム・ナッシュとは、結婚よりも音楽を選び、すべてをさらけ出した名盤『ブルー』を制作したものの、その後、傷ついた心を癒すために1年間カナダに戻り、電気のない生活を1年間引きこもって暮らしていたというのですから、彼女の嘘のない言葉には心が打たれます。
デビュー以前に、未婚の母となり、お金がないため養子縁組に出した娘と32年ぶりに再会するというエピソードも映像で出てきます。
この素晴らしいドキュメンタリーは2003年時点までで、ちょうど過去を総括した2枚のアルバムを発表したところで終わるタイミングではありましたが、その後しばらくしての長い闘病生活、もう歌えないのではと言われた中での2022年での奇跡のカムバックコンサートと、あまりにも劇的な彼女の人生は続いています。
初期のフォーク、中期のポップの後は、ジャズやワールドミュージックに傾倒していったため、分かりにくいと言われるジョニ・ミッチェルですが、その理由と流れが良く理解できる見事な映像作品だと思います。
全127分日本語字幕付き、楽曲は英語詩の表示あり
宇田和弘氏の解説書付き
2003年コロンビアミュージックエンタテイメント