名著復刻　詩歌文学館
葛飾句集
水原秋桜子著
馬醉木発行所　初版発行　昭和5年4月1日
　　　　　　復刻版発行　昭和55年4月初刷
四六判　125P

水原秋桜子の句集『葛飾』の複刻版。本書自序にあるように、水原秋桜子は『葛飾』の前に『南風』という句文集を刊行していますが、『南風』から作者自身の気に入った句を選抜して編まれたのがこの『葛飾』であるため、作者自身にとっては『葛飾』が第一句集という位置づけ。

『葛飾』は昭和5年に『馬酔木叢書第四篇』として発行された。発行所は馬酔木発行所。「ホトトギス」から独立した水原秋桜子が主宰する短歌雑誌「馬酔木」から、叢書として刊行された一冊。「ホトトギス」からの独立は高浜虚子との対立が原因の一つであったそうで、「ホトトギス」同人の句集出版に際しては序文を虚子に依頼するのが通例であったのに対し、本書の序文は水原秋桜子自身が書いていることからも、その対立の様子が垣間見える。

俳句界の中心である「ホトトギス」を離れ、自身主宰の「馬酔木」から刊行された『葛飾』は初版はたった500部しか刷られませんでした。しかし、刊行されるや否や俳壇に非常に大きな反響をもたらし、刊行の翌年昭和6年に再版されます。当時の俳句人口の少なさからして句集の再版はとても珍しく、このことからも『葛飾』がどれだけ大きな評判を呼んだかが分かります。

従来の「ホトトギス」の俳句は客観写生を提唱し、自然の実態をそのまま具象化することを目指してきたが、秋桜子の句は写生を基礎に「尚ほ自己の心に愛着を持つ」（本書自序より）、見えたものの実像に作者の自由なイメージを加えた俳句でした。秋桜子の句は新興俳句運動の先駆となり、俳句の近代化を推進することになった。

＊保護用ハトロン紙を外せば表紙はきれいです。


　経年により函にやけがありますが、本紙はきれいかと思います。写真をご覧ください。

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