還暦を過ぎてからデビューした話題の作家、若竹千佐子さんの最新エッセイ集「台所で考えた」の出品です。
私が読み終えた中古ですが、折れや曲がりのない美品です。
ただし購入時からあったスピン跡が92〜93ページにあります。
たぶんこの作品には全てあるものだと思うので、気にしないことをオススメします。
この冊子は若竹さん直筆のサインと落款が見返しにされていて、力強い筆跡には若竹さんらしさを感じます。
総ページ数165。
初版発行2024年11月30日。
この冊子は初版です。
ご不在でもポスト投函されるネコポスで発送します。

若竹さんはユーモアがあるので一見では気付かないかもしれませんが、この本にはかなり本質的なことが書かれています。
若竹さん自身が経験したことで気付いた、と記されていますが、これに気付ける人はほとんどいないので貴重なものです。
岩手の寒村に生まれ、小説家を夢見ながらも現実には何もせず、教職を目指すも挫折し、専業主婦として長年生きてきた若竹さんが、夫を亡くしたことで「自分の時間」を取り戻し、ついに原稿用紙に向き合うようになったとのこと。
ナントカ賞やらに価値があるとは思いませんが、賞のおかげで作品が読まれるようになるのなら大歓迎です。

「自分の中に大勢の他者が住んでいる。その者たちとの合議制の中で私は生きている」と作中にありますが、それが個人というものの本質です。
若竹さんは芥川賞受賞作を書こうと思い立つ寸前に「やっと気付いたか」と自分の中の他者に大声で一喝されてようやく気付けた、と書いています。
衝撃的だった、とのことですが当然でしょう。
最愛の夫を亡くし、子供たちは既に自分の手を離れ、独りぼっちで生きていると思い込んでいたそうですから。
人間は誰しもたったひとりで生きている、なんてあり得ないのです。
ところがほとんどの人は勘違いしちゃっている。
自分の内にいる大勢を活かさないから、賞や金や名誉などという外的なものを欲しがるのです。
若竹さんも自身が受賞したとき、自分ではなく周りの人達のほうが喜んでいたと書いています。
私は存外冷静だった、と。
本当に価値のあるものは自分の内側にしかないと分かったからでしょう。

この出品のBGMは小室みつ子と小室哲哉の「レジスタンス」です。
学校で習うことに大事なものはありません。
集団の中でどう生きるか、くらいしか。