はしがき
本書は、タイ語の初歩的知識をすでに有し、タイ文字の読み書きのできる学習者が、これまでに蓄積した知識を表現別あるいは用法別に整理し直し、より実践的な運用能力を身につけることを目的として着したものです。
ここにとりあげた100のタイ語文例は、どれも基本的かつ重要なものばかりであり、さまざまなタイ語表現の代表としてこれらをそっくり暗唱することで，より豊かなタイ語表現能力が養われるものと信じます。暗唱は一見，古い方法のように思われがちですが、常に外国語学習の基本の一つであることに変わりはありません。
各課の最後におさめた読解問題では、人工的でない自然なタイ語に慣れてもらうため、現代のタイで読まれている小説、エッセイ、雑誌，新聞等から収集した未加工のタイ語文を出してあります。従って、中にはやや難解な文や前後のコンテキストが分からないと理解しづらい文も含まれています。本書を読まれる際は、まず本文を最後まで一通り読み終えた後にこの読解問題に挑戦してみて下さい。
本書中の文法や表現に関する記述は、あくまでタイ語を実践的に運用しようとする学習者向けに説明したもので、専門家を相手としたものではありません。
これらタイ語文法の説明に当たっては、東京外国語大学教授坂本章先生の『タイ語入門』（大学書林）と同客員教授ウィチャイ・ピアンヌコチョン先生の『タイ語文法』（東京外国語大学語学教育研究協議会，非売品）から大きな示唆を受けています。特に、随意動詞、不随意動詞の概念は坂本先生の考えを踏襲していることをお断りしておきます。
なお、まだタイ文字に慣れていない学習者は、拙著「やさしいタイ語文字の読み書き』（大学書林）ほかで一通り文字の勉強をなさることをお勧めします。
最後に、本書の刊行でお世話になりました（株）大学書林と煩雑な編集に取り組んでいただいた（株）ロガータに心から感謝いたします。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　1995年4月　　　　宇戸清治