「東京タイムスリップ１９８４⇔２０２１」

著者：善本 善一郎
出版：河出書房新社 (2021/5/22)
定価：2,002円

■東京の街角の、定点観測写真集

著者の自宅で発見された、大量のネガ・フィルムに残された、昭和末期の活気ある東京の風景。

この本は、そんな街・人の情景と、「同位置・同角度」で「東京の今」を撮影し、対比させた不思議な写真集です。

平成以降の東京しか知らない人は、この３０年弱の劇的な変容を。

昭和末期の東京を知っている人は、現在の景色にも残るその面影を。

今までも、これからも、変容し続ける東京を、時間を超えて楽しめる一冊です。


■街も人も変わるのに、変わらないもの

人も街も、ガラッと変わっている場所もあれば、どんなに時代が移り変わっても、替わらない風景あります。

例えば、神田川橋梁下にある看板。

１９８４年の写真では「今日もお元気で！」だったのに対して、２０２１年は「明日もお元気で！」に変わっていること。

比べて見えてくるものは、人それぞれ。

東京出身でなくても、当時の時代を知らなくても、何だか懐かしいような、安心するような、興味深い写真たちです。


■当時と現代のアングルが本当にピッタリ

過去とまったく同じ場所、同じ構図で写真を撮ることの不思議。

そこから見えてくる街の激変ぶりは、まるで人の一生のよう。

発展することより、当時賑わっていた風景が、まるで別の場所のように寂しく変わってしまった姿がどこか儚げですが、

実際に写真で比較できる点が、より視覚的に細部の雰囲気を際立だたせます。

写真の中で固定された人達は、この５秒後どういう動きをしたのだろう。

そして今どうしているのだろう。

変わっていくのは郷愁ばかりではなくて、「都市の自由と多様性」なんだそう。

３７年後の２０５８年に、３枚目の写真を並べてみたら、どうなっているだろうと想像してしまう一冊です。


■善本　喜一郎（よしもと・きいちろう）

１９６０年、東京都出身。

森山大道や深瀬昌久に学ぶ。

１９８３年「平凡パンチ」特約フォトグラファー。

雑誌や広告などで活躍。

２００８年より宣伝会議にて講師。

公益社団法人日本広告写真家協会(APA)専務理事。