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死神の戯れ

連続殺人犯が牧師であるオーティス・ジョイ。教区の信徒からは尊敬され人気がありますが実は偽牧師。己の保身のためだけに人を殺してしまいます。あっさり殺しちゃうのですが、それだけに捕まらないのですね。最初に紹介される殺人シーンは、教会の寄付金横領の証拠を主教（オーティスの上司）から突き付けられ辞職を余儀なくされたオーティスが、主教の後頭部をペーパーウエイトで一撃。石切り場から死体を投げ捨てるといった衝動殺人です。

　練りに練った計画があるでもないこんな発作的殺人でも捕まらないのは、どうやら英国人たちは「聖職者は犯罪を犯さない」と信じ切っている節があるのです。

でも小さな村での出来事ですので、事件が連発すると流石の人気者のオーティス偽牧師の身辺で不穏な噂が絶えなくなります。それを打ち消すために煩い奴をどんどん殺していくっていうあきれたサスペンス。ユーモラスな翻訳も相まって田舎町の美しいたたずまいと人々の日常生活がコミカルに綴られています。かといって面白くないわけではありません。ラストに一ひねり加えられていますよ。



殿下と七つの死体

貴族の未亡人である美貌のメリア夫人から一週間の狩猟パーティ（狩りの合宿ですな）に招かれた皇太子バーティ殿下。殿下はもちろん「プリンス・オブ・ウェールズ」です。そこには上流階級の人たちもよばれていて、プチサロン風の合宿場の館で１日ひとりずつ招待客が殺されます。

　そんな剣呑な合宿。皇太子様、最初に死人が出た時点で、ことが明るみに出てスキャンダルになることを恐れて、というか平民の死なんてあまり頓着しないバーディー殿下は狩猟を続けます。とかくするうちに毎日一人ずつ死体になっていくわけですが、この殿下は探偵心に火が付いて自分の推理で犯人を捕まえようと、殺人を楽しみにしている風さえ感じられるのです。とはいっても素人探偵ですので、的外れな推理や探索ばかり。殿下はマザーグースの詩にある曜日と、死人の関連を見つけて有頂天ですが、この殿下の迷探偵ぶりが読者をミスリーディングへ。