1989年7月10日 第四刷発行。

トム・ウルフは、1930年3月2日生まれ、2018年5月14日に逝去した、米国の作家、そしてジャーナリストです。
特にジャーナリストとしての評価は高く、＂ニュー・ジャーナリズム（New Journalism）という言葉を、最初に使い始めたのは彼であり、ジャーナリストという範疇を超えた多くの表現者－ノンフィクション・ノベル（creative non-fiction）を唱えた、トルーマン・カポーティやノーマン・メイラーなどと共に、米国の文学界に多大な影響を与えることとなりました。
このニュー・ジャーナリズムというのは、客観的なニュース性を重んじながらも、敢えて主観的に取材対象との距離を測り、ひとつのキャラクターのストーリーとして捉えてみようとする試みでした。
それは、ジャーナリスト＝取材者が自分の姿を見えないようにするという旧来の伝統的なジャーナリストとしてのスタイルと、自分の想像力を読み手に共有してもらう作家としてのスタイルとのバランスを保つという、軽妙かつ困難、そして斬新なスタイルとして注目を浴びたのでした。
訳者あとがきで引用されている、「1970年代は1960年代の騒々しさの後に来た小康状態、休息期間、とよく言われる。私はまるでそうは思わない」というトムの言葉は、時代の流れと共に＂みんな軽くなった＂、事件や行動のひとつひとつに意味を見出した1960年代とは違ったかたちで、感じて、考えて、悩んだ時代－それらが消費社会のなかで、良くも悪くも効率良く受け入れられて、消えていった時代が1970年代だったことが、本書からは伝わってきます。

経年により、白い紙の部分に少し色褪せがあります。
それ以外は、帯付きの美品です。