《品切稀少本》
物語による日本の歴史
石母田正 / 武者小路穣
講談社学術文庫
定価: ￥ 1000+税

#石母田正 #武者小路穣 #本 #歴史／日本史

英雄や庶民の物語が日本の姿を描き出す
若き日の網野善彦氏が編集担当した名著

国の始まりを説く国引き・国作り・国生みの物語。山や川に宿る神々たちの物語。国を讃え家族を想う万葉の歌。王朝時代の伝奇的あるいは絢爛たる物語。時代時代の想像力が描き出す日本の姿。古事記・風土記から源氏・竹取・平家物語まで、古典文学の中に生きる英雄や庶民の活動を読むことで歴史が浮かび上がる。

本を読む喜びを知るようになった頃、網野さんは私に歴史学の最初のレッスンをほどこしてくれた。「おみやげだよ」と言って手渡されたのは、むしゃこうじみのる（武者小路穣）と石母田正の書いた『物語による日本の歴史』（1957年）という本だった。「日本史でも、ようやくこういう本が書かれるようになったのです」と、網野さんは興味深げにその本をのぞき込んできた父に、説明をはじめた。――＜中沢新一『僕の叔父さん　網野善彦』集英社刊より＞
〈講談社webページより〉


　名にしおわば　いざこととわむ　
都鳥　わが思う人は　ありやなしやと
(都鳥という名がほんとうなら、都のことを知っているだろうから、わたしの思う人が無事でいるかどうか、きいてみよう。)
9世紀ごろの有名な歌人在原業平の和歌を中心にした短篇を集めた『伊勢物語』の一節です。業平が、そのころ政権をとっていた藤原氏に嫌われて、都にいられなくなり、東国へ旅したときの、この東下りの部分は、その中でも有名です。各章のはじめに、「昔男ありけり」とあるので、「昔男の物語」などとよばれます。

藤原氏の摂関政治は、文学の歴史にも大きな変化をあたえた。それまで文学といえば、漢詩・漢文のことであって、和歌は片隅の私的な文学にすぎなかった。万葉集の有名な歌人であった大伴家持でさえ、正式の伝記には、歌人であったことが記されていないほどである。延喜・天暦時代が近づき、いわゆる六歌仙の時代が来ると、ようやく漢詩・漢文に対する和歌の対抗意識が芽生えてくる。……。延喜を中心とするこのような時代の風潮のなかから勅撰の古今和歌集が編纂され、漢詩文に対抗し得る宮廷文学の一つとなった。
〈本文より〉　

美品　ほぼ新品