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長い家の殺人

学生バンド“メイプル・リーフ”のメンバーたちがコンサートの準備の合宿のために集まっていました。メンバーはベースの山脇丈広、ギターの戸越伸夫と武喜朋、ドラムスの駒村俊二、キーボードの三谷真梨子、そしてカメラマンを勤める市之瀬徹の六人です。　しかし、合宿翌日の午後、彼の部屋で死体となって発見されます。前の晩医行方不明になって彼を大捜索した際には部屋には彼はなかったのです。

真相が分からないまま時間は過ぎ、メイプル・リーフ”は戸越を欠いた状態でライヴを開催します。ところが演奏の中、今度は三谷真梨子がいなくなります。楽屋をはじめライブハウス中を捜索しますがどこにもいません。そして彼女が見つかったのは先ほど探したときには誰もいなかった彼女の控室。またも死体が移動するという状況に、警察は困惑します。そして探偵役として彼らの前にあれ割れたのが、“メイプル・リーフ”初代ドラムス、信濃譲二。彼が消えて現れた死体の謎を解き真犯人に迫ります。



動く家の殺人

信濃譲二はマイナー劇団「マスター・ストローク」に参加し、裏方として働き始めます。今回の彼らの公演「は、以前舞台での事故で死亡した団員の追悼公演なのです。しかも死亡した団員の父で、有名建築家が新たに建築した劇場での公演でした。しかし初日、舞台の上で舞台小道具であったナイフが本物のナイフと入れ替わり、役者が重傷を負うという事件が起きます。さらに引き続き舞台上で役者の刺殺事件が発生してしまうのです。劇団員たちは誰が犯人なのか、そしてどうやって部隊小道具のナイフとと本物をすり替えたのか推理して、芝居小屋を動かすという究極ネタに到達するのですが、歌野はこの驚愕のトリックには冷淡で、あくまで人間関係に拘ってどんでん返し劇を構築するのです。

したがって、歌野らしい大きなトリックは確かにあって、読者を楽しませるのですが、多くの推理小説にあるようなトリックにはそれほど拘泥しません。エピローグで死んだはずの信濃譲二が再登場するところから真の謎解きが始まるという凝った構造です。