明治～大正(大正寄りだと推測)に制作されたであろう、染錦 色鍋島 赤濃牡丹紋 蓋物椀を出品します。
経年による一点の錦剥げ、見込にある1箇所の鉄粉、生地に空気が入ったのか注意しないとわからない盛り以外は未使用と言って良いほど優品です。

この椀は凄く手間暇がかかっており、職人が制作にかけた物語をもっています。

染付による枝葉の薄い濃ゆいを使い分けた濃淡、濃の塗りが上手くムラがない、葉脈に染付と上絵を混ぜています。線取りや構図がよく考えられています。

一見、色鍋島のように感じる上絵による草葉も緑、黄色と色使いがよくできており、色鍋島を知っている描き方です。が、古鍋島の描き方では無いことがわかります。よって有田、または伊万里の大川内で制作されたものです。

赤の牡丹の細いタッチ、見事です。スタンプではなく手描きです。印判や銅板転写はみれば一目瞭然ですが、こちらは総手描きによる手抜き一切なしです。

蓋や椀にある高台の二重線も丁寧にやっています。

そして、特筆すべきは赤濃です。見ておわかりになるかと思いますが、染付の枝葉、上絵牡丹や草葉の間でさえ塗り残しを許さないほど丁寧な濃です。通常、濃ムラや塗り残しが見られますが、こちらは全くありません。熟練を超えた職人技です。染錦だけでも大変な作業であるのに、最後まで手抜きせず、やり遂げた蓋物椀と言えます。

1客の椀にこれほど手間暇かけたものは大量生産できません。それこそ時間と労力、信念を注いだ1点物と言えるでしょう。

サイズは写真の通りです。

現代では難しい、先駆者達が生涯をかけ、残した技術の結晶と本物の焼き物は時代を経ても、なお美しいと感じられるかと思います。

よろしくお願い致します。