二つの【肥前名護屋城図屏風】
七年間のみ存在した幻の都市絵図

●【肥前名護屋城】
戦国の”おわり”を迎え、秀吉は、肥前・名護屋の地に全国の諸大名たちを集めてまちを築いた。人口20万人を超える世界最大級の規模を誇り、7年間のみ存在した幻の都市です。16世紀末「文禄・慶長の役」と呼ばれる大陸・朝鮮国への侵攻に際して築かれた肥前名護屋城を中心とした半径約3kmの圏内に諸大名の陣屋が150あまりも築かれたことよります。今でもその範囲に石垣や土塁等が残っています。

●【「肥前名護屋城図屏風」の世界】
　-二つの「肥前名護屋城図屏風」-
［カラー図録］表紙とも16項
佐賀県立名護屋城博物館

2つの「肥前名護屋城図屏風」は、「文禄・慶長の役」の際、国内拠点となった「肥前名護屋」を描いたものです。屏風絵は、名護屋城の北北東約2kmにある加部島天童岳(標高112m)後方上空からの眺望として描かれ、名護屋城を頂点に末広がりに展開するその城下域(武家屋敷・城下町等)や名護屋城周辺域の諸大名陣屋の広大な範囲が鳥瞰的構図で緻密に描かれ、それらは現況や発堀調査等との整合性も高く往時の名護屋の繁栄を知る貴重な資料となっています。

⚫︎【名護屋城博物館所蔵本】　六曲一隻
佐賀県重要文化財　本紙157Ｘ 350cm

名博本は、六曲一隻の屏風として仕立てられる以前は(昭和40年前後）、美濃紙を繋ぎ合わせた大きな画面で竪8つ、横3つに折りたたんであったようです。上記のような旧状や絵画自体の淡い色彩、金雲の想定される部分が空白となっていること等から、本来は屏風絵の「下絵」或いは「写」の類であったものと考えられます

⚫︎【群馬県個人所蔵本】　六曲一双　
　 本紙168Ｘ 380cm

伊勢崎市の旧家に「唐津城図(仮称)」と共に6曲一双の屏風として所蔵されていました。制作目的については判りませんが家臣を従えた若い侍の後座船が名護屋へと向かっている特異な様子が描かれており、ある程度の物語性が屏風の中に秘められている可能性があります

名博本との主な相違点
1) 完成された屏風絵であること
2)名博本よりも縁辺部が広く描かれて
いる事(名博本は屏風に仕立てる際に切り取られている可能性が有ります。
3)約80家に及ぶ諸大名陣屋の表記
4」船橋の描写等
名博本には無い貴重な情報を見ることができます。