悪魔の友　ファウスト博士の真実

マウス，ハンスヨルク【著】〈Ｍａｕｓ，Ｈａｎｓｊ¨ｏｒｇ〉

金森 誠也【訳】

中央公論新社　1987



悪磨の仲間か、永遠の探究者か。存在を抹殺されながらも、多くの伝説の主人公となり、ついには西欧精神の一つの象徴にまでなったファウスト―１６世紀の魔術の有様などとともに、その実像に迫る。



目次

１　シュタウフェンの死

２　「消えた足跡」

３　若い洒落者

４　魔術師誕生

５　トリテミウスとファウスト

６　悪魔の片割れ

７　旅する魔術師

８　インゴルシュタットのわらしべ

９　ある夢の栄光と終末

１０　「一つの世界の神話」



ヨーハン・ゲオルク・ファウスト博士は不幸な錬金術師の代表である。ある意味、ニコラ・フラメルと正反対の錬金術師といっていい。

　破片のような証拠類の数々をとおして、ハンスヨルク・マウスがこの本を書き、実在したファウスト博士の姿を生き生きと再構成したのだ。

　ファウスト博士は魔術が真面目な学問として教えられていたクラクフの大学で学び魔術の大家へと成長した。

　ここで、魔術といっているのは、①巫術（シャーマニズム）、②錬金術、③占星術の３つの学問のことで、ファウストはこれらすべてにおいて卓越していた。また、ファウストは医師としても一流になった。

　１５２４年、ファウストは悪魔と提携しているという理由で大学から追放されてしまったが一般人の間では非常に人気があった。おかげで、彼は占星術師、医師として十分なお金を稼ぐこともできた。助手の１人は、ゲーテの『ファウスト』にも登場するヴァーグナーだったといわれている。

　ファウストが錬金炉の中の物質が大爆発で亡くなったあと契約期限が切れたので、悪魔がファウスト博士を連れ去ったのだ、と噂になった。かつてファウストと関係を持ったことのある多くの人々はそのことが知られれば、その人物もまた悪魔と関係があったのではないかと疑われるのを恐れ、ファウストに関する記録を抹殺した。

　優れた錬金術師であると人に知られることはしばしば恐ろしい結果を招くが、ファウスト博士の場合は、まさに、その最も極端な例といっていいのではないだろうか。 （草野巧さまHPより）



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