発表：2019年11月3日
オリジナル楽曲発表：2013年

＜let go に寄せて＞

ジャケットの写真は鎌倉の海で「Lamp」MV撮影時に、僕が撮影したものである。

本当は「MELODICA」のジャケットにしたいとも思っていたけれど、nujabes作品を多く手掛けてきた画家・藤田二郎さんにお願いすることになり、写真は使われないままでいた。
その後「let go」のレコードをリリースする運びとなり、ようやく思い出のこの写真を使わせて頂いた。裏面も同じく鎌倉から江ノ島を望む海の夕景。
よくセバさんと見ていた風景だ。

MELODICAに収録されているnujabesさんとの楽曲はLampが知られているが、実は最後の曲も彼とのセッション・コラボレーションから生まれている。
彼のビート、そして貴重なフルート演奏。
let goは彼が亡くなってから構築したので、この曲を作っている期間は言葉にしがたい感情があった。
let goというタイトルも、昔から曲名にしようとメモしていた大切なもので、「執着を手放す」という意味を込めている。

B面の「フレグランス・ライク・ホーム」もMELODICAに収録されたラップ曲でも特に意味がある曲で、「まるで家のような香りのする場所」に辿り着きたいとPace Rockが愛を歌っている。
MELODICAにはshin02さんなど、nujabes作品のラップを歌ってきてラッパーが勢揃いしているので、それまでの経緯を知らない方には驚かれたが、僕は物語を完結させるためにやるべきことは全て其処に置いてきた。

それから10年が経ち、彼の命日2月26日に、渋谷スクランブル交差点の全モニターにnujabesの音楽が5分間鳴り響くという時間が訪れた。
スクランブル交差点の大きな映像には、この時撮影したlampのMVが流れていた。
それはとても、静謐な時間だった。
あの時、音楽から逃げずに、10年経ってもまだ音楽を続けてその時間を過ごせたこと。
僕はやはりMELODICAを遺して間違っていなかった。あの時やるべきことはやったんだと確信した。
手放して、次へ旅立つために。

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