1980中旬-90年代前半の製品で、パール伝統の「フリー・フローティング・システム」初期モデルです。
フリー・フローティング・システムとは、上下フープに張力を加える支点となるラグがシェルに固定されておらず、上下フープがお互い引っ張り合ってシェルをサンドイッチするような構造によって、固定ラグ方式とは異なる鳴りを生み出します。
銘々通り、シェルがフープの中間で浮いている様なイメージですが実際は浮いているのではなく、上下フープによって挟まれて固定されているので、一般的なシェルにラグが固定されているタイプと比較するとシェルの振動する領域が大きいといえます。
よって、鳴りがワイルドで力強い特性の有るスチールシェルとの組み合わせは特徴的で、ロックなど激しい曲との相性はとても良いです。
現在もフリーフローティングシリーズは継続されていますが、胴の短いピッコロしか残っていない理由は、深胴では
「鳴り過ぎる」
からでしょうか。
鳴る胴を抑える事は可能ですが、鳴らない胴を鳴らす事は不可能と思うのですが、深胴スチールが現行ラインナップから消えてしまった事は残念です。

またフリーフローティングは、別素材のシェルのみが販売されていた（現在は販売されていません。）ので、オークションなどで入手出来れば、1台のスネアで異なる素材の鳴りを楽しむ事が出来ます。
更にS-814Dは全面当たりスネアワイヤー（スナッピー）と、操作感が心地良くメッキに滑らかな艶のあるダイカスト製スイッチとガイドを備えています。
ダイカストスイッチとガイドに深く刻まれた「Pearl」のロゴは、造形的な拘りを強く感じます。

全面当たり機能は、スネアワイヤーがヘッドのみだけではなくフープにも接触するタイプで、ピアニッシモなどの繊細な演奏でも反応が良く、ボトムヘッドの共振を妨げにくい構造なので、打音の強弱によるスネアワイヤーの響きに拘りがお有りの方にはお勧めです。

フープはスチール製・トリプルフランジで、トップの部分は一般的に多い外巻きタイプです。フープの厚さはテンションボルト付近のノギス実測値で約2.3mmです。

シェルやスイッチなどのメッキ部分には艶が有り、保存状態は良好です。
この年代のスネアは、一見キレイに見えても、細かい磨き傷が残る固体がありますが、このS-814Dは磨き傷は殆ど有りません。ピカピカです。

日本製