本作品は、1929年（昭和4年）から翌1930年（昭和5年）まで『東京朝日新聞』夕刊に３７回にわたり連載された。その後３8回から５１回は、雑誌『新潮』に「浅草赤帯会」と称して掲載され、５２節から６１節を雑誌『改造』に「浅草紅團」と称して掲載された。単行本『浅草紅團』は、以上の６１回分をまとめて、同年1930年（昭和5年）12月5日に先進社より刊行された。



川端康成は、『浅草紅団』にはモデルは一人もなく、架空の物語であって作中に出てくる「浅草紅団」、「浅草紫団」、「浅草赤帯団」、「黒帯団」などという不良少女少年団の名称も仮作であるとして、次のように述べている。



「もし強ひてモデルをもとめるとすれば、佐藤八郎氏（※詩人サトウハチロー）、添田唖蝉坊氏（※演歌師）、石角春之助氏（※風俗研究家）などの浅草の本、また不良少年研究家たちの本であらうか。それらの本のところどころを拾ひ、つなぎ合はせた部分もあるが、それらの本から浅草の雰囲気を与へられた恩恵は非常なものである。私は浅草になじむことも、浅草にはいることも出来なかつた。浅草の散歩者、浅草の旅行者に過ぎなかつた。さういふ好奇心が「浅草紅団」を書かせた。それがこの作品の長所でもあり、より多く短所である。」— 川端康成「浅草紅団」について



昭和５年１２月に先進社より初版発行された川端康成「浅草紅団」の復刻版で、日本近代文学館・特選名著複刻全集・昭和５０年５月６刷発行です。経年のヤケも少なく、書き込み、シールの剥がし跡、蔵書印などもありません

４９年前の古書であることをご理解の上、購入のご検討をお願いいたします。