山田風太郎 /戦中派復興日記 昭和26年・昭和27年 初版帯付美本
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■コメント
2001年に死去した山田風太郎は、死してなおファンが増えている希有な作家である。本書は先に刊行され、大きな話題を呼んだ『戦中派焼け跡日記』『戦中派闇市日記』『戦中派動乱日記』に続く昭和26〜27年の未公開日記である。
著者29〜30歳、本格的作家活動に邁進、江戸川乱歩、横溝正史、高木彬光らとの酒席交流、執筆各社からの原稿料、食糧品はもとより身の周りの諸品の価格など戦後復興に立ち上がる社会のありさまを克明に記す。また、結婚に至る経緯も記され、山田誠也・風太郎の内面を知る貴重な資料である。
〈夜、成城の横溝氏たずねのんでいるうち前後不覚、気がつくと、どこともしれぬ深夜の町をフラフラ歩いていた。眼鏡消失、額にけがして血だらけ、金も消失。さかんにお巡りにトッチメられ、朝ヘトヘトになってかえる(昭和26年3月9日)〉
〈およそ日本民族の最大の弱点は科学的精神の欠如だろう。換言すれば推理力による把捉を重んじないという性向だろう。これを矯正するために探偵小説は一臂の力をかし得るはずではないか。日本の民衆に推理という精神作用がいかに興味あるものであるか、これを知らせるために探偵小説をかくという気概があってもよいではないか(昭和26年6月23日)〉
〈概していえば余は肉体でかく芸術家を軽蔑する。肉体でかく、とは肉体小説をかくという意味ではない。鈍で、ただ丈夫だけで押しまくるような作家である。小説でいえば田村泰次郎。余は頭でかく作家である。而して余は感性でかく作家には全面的に降服せざるを得ない。例えば太宰治。(昭和27年5月10日)〉
#山田風太郎
#横溝正史
#江戸川乱歩
#高木彬光
#司馬遼太郎
#本 #BOOK #文学 #小説
2001年に死去した山田風太郎は、死してなおファンが増えている希有な作家である。本書は先に刊行され、大きな話題を呼んだ『戦中派焼け跡日記』『戦中派闇市日記』『戦中派動乱日記』に続く昭和26〜27年の未公開日記である。
著者29〜30歳、本格的作家活動に邁進、江戸川乱歩、横溝正史、高木彬光らとの酒席交流、執筆各社からの原稿料、食糧品はもとより身の周りの諸品の価格など戦後復興に立ち上がる社会のありさまを克明に記す。また、結婚に至る経緯も記され、山田誠也・風太郎の内面を知る貴重な資料である。
〈夜、成城の横溝氏たずねのんでいるうち前後不覚、気がつくと、どこともしれぬ深夜の町をフラフラ歩いていた。眼鏡消失、額にけがして血だらけ、金も消失。さかんにお巡りにトッチメられ、朝ヘトヘトになってかえる(昭和26年3月9日)〉
〈およそ日本民族の最大の弱点は科学的精神の欠如だろう。換言すれば推理力による把捉を重んじないという性向だろう。これを矯正するために探偵小説は一臂の力をかし得るはずではないか。日本の民衆に推理という精神作用がいかに興味あるものであるか、これを知らせるために探偵小説をかくという気概があってもよいではないか(昭和26年6月23日)〉
〈概していえば余は肉体でかく芸術家を軽蔑する。肉体でかく、とは肉体小説をかくという意味ではない。鈍で、ただ丈夫だけで押しまくるような作家である。小説でいえば田村泰次郎。余は頭でかく作家である。而して余は感性でかく作家には全面的に降服せざるを得ない。例えば太宰治。(昭和27年5月10日)〉
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