ラベルが剥がされている？ごくありふれたことでは？
と言われればそれまでなのですが、たいへんに想像を掻き立てられ…
美しい良い佇まいのバイオリン、可能性を感じて入手しましたがメイン楽器とはなり得ず、さらなる調整を施し魅力を感じてくださる弾き手の方にお渡しできればと思いました。

●ラベルのない楽器を選んだ経緯、音、コンディション

理想はラベルもあって作者名がわかることですが偽物ラベルが多い世界(古い銘器のラベルなどはほぼフェイクとのこと)で
ノーラベルの楽器も候補にしたらどうか？と思い立ち、これまで実際に良い楽器に出会うことができました。
楽器そのものを見極める必要あり、ラベルに頼れないのでより厳しく見ますし惑わされる要素は減ります。
長い目で見ると費用対効果高い楽器を手にする可能性が高くなるようと推察します。

内部裏板接合部パッチの年季、f孔周りの枯れ具合、剥がされたラベル部の色焼け具合など経年を物語り、音の枯れ方から100年程度超？私見ですが19世紀後半から20世紀前半あたりのフレンチ作品ではないでしょうか。
パーフリング外側の縁取りなど手仕事のあとを垣間見、温かみを感じます。

やや薄い板の厚み、ふくよかなアーチングはフレンチの薫り、音もその傾向だと思います。
柔らかくふくよか、華やかな鳴り。
直線的な響きというよりは、ブワッと空間を満たす感覚で、鈴のような？微妙に鼻にかかったような発声をします。音量もキープし、4弦のバランスも絶妙にいいです。

先日職人さんにお見せし、駒が少し低かったため、魂柱が少しだけ短くなっていたため、指板上ナットの摩耗あり、それぞれ新調し
ペグの回りもスムースに、指板もきれいにしていただきました。

ペグは紫檀？、テールピースと顎当ては柘植です。
確認できる割れは表板E線側f孔から6〜7㌢ほど、接着済み(裏からのパッチ補強はされていない？)が一箇所。裏板、横板に割れなし。

裏板ロウワー部にペン先で叩いた筆跡のような跡が密集、オールド楽器を演出したがわざとらしくなってしまったのでしょうか？ムリしなくても、十分古い楽器なんですが（笑）製作時のものか後代のものか…。好ましく捉えていただけるかちょっと訳アリとご覧になるか…どうでしょう？
ぜひご検討の1本となさっていただければ嬉しいです。
古いものですがハードケースに入れてお送りします。