日本の詩歌　
斎藤茂吉
中央公論社

#斎藤茂吉 #本 #日本文学／小説・物語

歌人斎藤茂吉は伊藤左千夫の弟子で、伊藤左千夫は正岡子規の門弟でしたから、斎藤茂吉は子規の写実主義の隔世遺伝的継承者といえます。また、茂吉は名著『万葉秀歌(上下巻)』で知られるように、『万葉集』を中心に和歌の伝統を色濃く受け継いだ歌人です。
「和歌」が全盛の時代には、予め題が決められていましたが一方、茂吉の短歌の時代になると、題が与えられていませんから、そのときどきの自分の心情をストレートに表現できます。茂吉の作風は、それに近い、感じたままに歌いあげるという、子規が提唱した「写生」という手法と響きあう関係といえます。
また、子規や伊藤左千夫らの師を通じて芭蕉にも深いシンパシーを感じていました。芭蕉の影響が色濃く反映した歌も多数知られています。
たとえば次のような、
　あかあかと日はつれなくも秋の風
　　　　　　「奥の細道」　芭蕉
　あかあかと朝焼けにけりひんがしの
　山並の空朝焼けにけり
　　　　　　「赤光」　　　茂吉
　あかあかと一本の道とほりたり
　たまきはる我が命なりけり
　　　　　　「あらたま」　茂吉
　ゆく春や鳥なき魚の目はなみだ
　　　　　　「奥の細道」　芭蕉
　命たえし祖母のかうべ剃りたまふ
　父を囲みしうからの目のなみだ
　　　　　　「あらたま」　茂吉

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