50年間、日本中の国語の教員を支配し続けた「エゴイズム」論がどのようにして生まれてきたのか、その過ちを正し、『羅生門』の本来の魅力を明らかにする。「音韻古典文法」に続く、教員生活40年の誤りを正すシリーズ第2弾。罪滅ぼし特価。
『羅生門』の前後15作品の表現とテーマを多角的に徹底分析。各種表現の使用頻度の数値化により特徴を炙り出す。昭和の文学者や教科書指導書編集者達の、当時の文学界の重鎮への忖度を感じながら、あの大事件との関連に仮説は進む。当時の内閣を総辞職させたシーメン事件の被告の論理と、老婆、下人の論理に共通点があるのは偶然か？関わる記述が、書簡にある。『羅生門』の執筆の参考になったとされている、有名な死体解剖見学の日のなんと三日後のことである。しかしそのエゴイズムさえ、単なるパラドキシカルな表現の一つとしてメタ視点に吸収され、テーマが姿を現す。
大学生にして、フランス小説の翻訳をし、友人に五万語の英文で手紙を書いていた語学の天才、芥川龍之介。高校生が読むには早すぎる、教養ある大人のブラック娯楽本である『羅生門』の、本質に迫る解説本が本書である。高校教員には、教科書会社以外のもう一つの指導書、参考資料としてお勧めする。
　さらに、エゴイズム論がどのようにして広がっていったのか、「羅生門」が初めて採用された1957年から1997年までの全指導書14社17版を分析した「羅生門論2」も同梱。そこには驚くべき発見があった。



A5版40ページ＋20ページ。