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まえがき
イタリア・スペイン・ポルトガルーこの三国を「南欧」として一括する習慣がある。この名称は、地中海に共通した地理的諸関係・生活様式の支配する地域として、地理学者に使用されているが、歴史学においては「西欧」「東欧」「北欧」という名称ほど熟したものになっていない。それは別にフランス南部をふくまないから厳密でないというのではなく、イタリア・イベリア両半島の三つの国、三つの社会を一貫する歴史的特質があるかどうか、今まで十分問題化されなかったからであった。イタリア史については、ルネサンス期の文化史的研究や訳書は多数あるにかかわらず、他の時代についてはほとんど研究されておらず、森田氏がイタリア史専攻史家としてイタリアに副学した最初ではないかと思われる。スペインについても文学史・美術史の文献、スペイン内乱関係の訳書はあるが、他の歴史研究は空白であり、ポルトガルについてわが国の関心はもっぱら日葡交通・切支丹関係に集中している状態である。私どもはこの実情を謙虚に確認しておきたいと思う。本書がくわだてられたとき、それは一つの大胆な冒険であることを企割者におことわりしたのであった。しかし私どもとしては、個々の研究のうちに、「南欧史」をイタリア・スペイン・ポルトガルの歴史の並列におわらせない問題意識をもちうる見通しをつけることができたのである。もしこの見通しが不可能ならば、「南欧史」という概念は意味のない地域の並列の歴史におわってしまうはずである。


古物商許可証
第 621272201772号 交付平成22年10月18日 大阪府公安委員会