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彼女は存在しない　

　多重人格者を絡めた連続殺人ミステリー。

主要登場人物は高校を中退して引きこもりの亜矢子と、平凡だが幸せな生活を送る香奈子。2人はひょんなことから知り合いになります。亜矢子は大学生の兄・根本と2人暮らしですが、その周りには不思議な出来事が頻発し、兄は亜矢子が多重人格者であることを疑って心配しています。実は香奈子が出会った亜矢子は彼女の別人格の一人の由子なのです。

一方香奈子の恋人・貴治がある日、何者かに刺殺されます。香奈子はこの犯人が亜矢子（＝由子）ではないかと疑いの目を向けるのです。

根本は心のうちを恋人である恵にだけ話していました。しかし今度は恵がバラバラ死体となって発見されます。ここにきて一連の殺人事件は香奈子によるものとわかるのですが、根本が香奈子と出会ったときに更の衝撃的な事実が明らかにされるのです。

叙述ものですが、後で読み返しても齟齬や誤謬がなく、相当練り上げたプロットであると感心させられます。



彼女の血が溶けてゆく

フリーライターの桑原銀次郎は、内科医の聡美が起こしたとされる医療ミスについて調査することになる。この里見は実は銀次郎の元妻というのがミソになっています。銀次郎は人女医の聡美とよりを戻したいと考えているので聡美の汚名を晴らして点数を稼ごうという思惑があり調査に熱がこもるのです。調査過程で聡美が医療ミスで死亡させたとされる患者・綿貫愛に不審を感じた銀次郎は、彼女が死んだ原因を探っていくという医療ミステリです。

とはいっても愛の死因は溶血に起因しており、その原因は何かという疑問に焦点が移っていくのです。

明かされる複雑な人間関係と、逆転劇を見せてくれるエンディングはインパクト抜群です。