昭和名作選集
『銀座八丁』
昭和十六年四月三十日　十刷
定價　壹　圓

『銀座八丁』は、私がはじめて書いた長いものである。昭和九年東西朝日新聞に連載した。銀座の姿を假りて、當時の様相を瞬間的に、出來るだけ正直に捉へようとしたこの作品は、従つてまた時代風俗の記錄にもなつてゐる。今讀みかへして見て、この數年の世態變遷の烈しさに驚くばかりだ。作者弱年のせゐもあつて、小説としては寧ろ未成品であるに係らず、
かうした文獻的な意味で存在していいかも知れない。
顧みると、私の小説はすべて多少に係らず、その傾向があるやうだ。現實を最も大切に扱ふことによつて、理想に近づけると云ふ考えから出てゐる。そこで、人物の象徴的形成が重大な意味を持つて來なければならない。『銀座八丁』では、その點遺憾な部分が多すぎるけれど、一つの期間に於ける私の人間觀を年輪的に示してゐるとも云へる。
　　　　　　　　　武田麟太郎

※昔、古本屋で購入した物です。とにかく非常に、古い本です。
希少性を感じていただければ、ありがたいです。

・シミ、ヨゴレ、焼け、破れ、折れ、剥がれ、外れかけ等があります。

長期自宅保管していたので、経年劣化はあります。
古本にご理解いただければ、ご検討ください。
よろしくお願いいたします。

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