作家浅田次郎さんの最新エッセイ「アジフライの正しい食べ方」の出品です。
意外に思うかもしれませんが、アジフライの正しい食べ方を指南する本ではありません。
もともとJALの機内誌SKYWARDに連載されているエッセイをまとめたもので、基本的に旅先での出来事を綴った内容になります。
しかしこの冊子の連載期間は2020年から2023年。
ウイルス騒動の渦中だったので、この間で浅田さんが実際に旅に出たのはたったの3回だけ。
これまでの旅の話などで連載を埋めていますが、そこはさすが大御所作家だけあって見事に読ませる内容となっています。
総ページ数254。
初版発行2024年9月30日。
この冊子は初版です。
ご不在でもポスト投函されるネコポスで発送します。

目に見えないほど小さなウイルスの存在が、世界中の人達の生活をまるっきり変えてしまいました。
昔も今も人間は変わっていないことを証明する一件だったと思います。
あと、私はもう一つ賢くなりました。
アマビエという妖怪がいることを知ったのです。
妖怪に願掛けする人がスマートフォンでSNSを駆使しつつ、時代を語る姿は滑稽でした。
浅田さんは従来、1年のうち2、3ヶ月を旅先で過ごすのが当たり前だったそうで、不要不急の外出自粛を求められたこの間、書斎に閉じこもることで仕事が捗って困った、とこの作品に書いています。
欧州、北米、中南米、アジア、アフリカ、オセアニアと制覇されているそうですから、狭い日本に閉じ込められた感覚だったことでしょう。

この作品には浅田さんの感じる「日本の恥」が記されています。
他国では全くあり得ない老人への危害が、日本では狙って行われると。
老は中国ではラオで、敬意の対象だし儒教の強いアジアでは当然年寄りは敬われる。
西洋でも同じく先人は敬意すべき存在であるのに、こと日本でのみは税金搾取の悪しき存在といった風潮が感じられると。
そういう意識を持つ若人に未来が拓けないのは当然だというのは、まあ私も同意します。
浅田さんが例え棺桶に片足突っ込んだ老人側の人間だとしても。
そしてそれが、この国における極端な少子化の原因であるという意見にも。

この出品のBGMはエンリケ・マルケスによる、パフォーマーはマイアミ・サウンド・マシーンの「コンガ」です。
実際の本作を読めば私の書評より軽快な、コンガのような作品ですからね。