商品：「伊藤博文 近代日本を創った男」

著者：伊藤之雄

定価：￥ 2800

　贔屓の引き倒しのところはありますが、さすがに研究者ならではな緻密な解析と言え、大変参考になる書物です。

　長年権力の座に居ましたが、時代がそうさせた面があるやもしれません。しかし、その萌芽は己に如かざるものを登用してきた、否、己に如かざるものにしてしまった面は否めません。これが大西郷と大久保卿との決定的な違いです。その点西郷海軍卿が山本権兵衛を見いだした点に及びません。後藤新平に”大西郷は、お前達から見れば西郷海軍卿の方が偉く見えるよ”と言った真意は解りませんが、この辺に限界があったのかもしれません。孔子は甯武子を評して”其の愚は及ぶべからざるなり”と言われたが実に色々な意味を含む言葉です。優秀であればあるほど”愚”になるということが難しい。その実例は大谷翔平を見ればわかりましょう。若者は転びながら自分を高める無限の可能性を秘めている。転ばぬ先の杖と思った真心は、7割は当たるが3割はその可能性を削いでいるかもしれないのです。その自戒を含めて読ませて頂きました。

　李鴻章が曾国藩の罪人であるように、伊藤公も大西郷・大久保卿の罪人であります。但し、第一級の人物であることには違いはありません。それは奥様を見ればそれはわかりましょう。国家を思い、少しでも日本を良い方向に向かわせようという思いが人一倍強かった、それを間近で見ているから奥様も努力された。これはなかなかできることではありません。惜しむらくは、副島蒼海先生や江藤新平・板垣退助など立派な人物が全て在野に下ってしまって、それを登用することができませんでした。



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