本書の主役は、一八世紀末から二〇世紀初頭にかけてのドイツに生きた女たちである。本書において私たちは、彼女たちの生活の軌跡を同時代に刊行されたさまざまな資料を通して再構成することを試みた。 この作業を通して私たちは、女と男の相互関係の織りなす生活世界の現場に読者を案内し、女性史および日常生活史の視点から近代社会とは何かをあらためて問い直したいと思ったのである。
資料集という性格上、本書の大部分を占めているのは、私たちが独自に選択した同時代文献の翻訳である。ただし私たちは、資料のたんなる編年史的な羅列ではなく、一方での女性史・家族史および他方でのドイツ近・現代史の最近の研究動向を考慮に入れながら、私たちなりの見取図をもつ資料を選択・配列することに心を配ったつもりである。その見取図とは何か。私たちが本書を編集するにあたって念頭に置いた理論的フレームワークについて、本書の構成とも関連させながら少し説明しておこう。
一つは、近代家族の概念にかかわるものである。 家族はつい最近まで、人類社会に普遍的に存在し、しかも歴史や文化差を超えて不変の本質をもつものと見なされてきた。しかし最近、わが国でも、P・アリエスの『〈子供の誕生』やE・ショーターの『近代家族の形成』をはじめとする欧米の代表的な家族史研究の成果が精力的に翻訳・紹介されるにいたり、私たちが普遍かつ不変だと思い込んでいた家族像は実は歴史の産物にすぎなかったということが明らかになってきた。つまり、ここにきてようやく、私たちの現在抱いている家族理念はたかだか二〇〇年あまりの歴史しかもたない近代家族の概念だったという評価が定着しつつあるといえる。それでは、近代家族の概念とは、、

前半は鉛筆による線引きがございます。写真ご参照ください。

古本ですができるだけ綺麗にしてお届けいたします。

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