「妻の終活」

坂井希久子

祥伝社文庫
令和４年第３刷
341ページ
定価:720円＋税

これからの私にとって切実なテーマなので躊躇無く手に取りました。

読み始めて思い出しました。

まだ「家庭訪問」があった頃、「茶菓の接待は無用」との約束を無視して、妻にフルコースの料理を作らせ、担任を待ち構えていた亭主関白の父親がいました。

女子大を出たばかりの私は、妻を顎で使うその傲慢な態度に憤懣遣る方無く、「お母さまのお具合いが悪くなられたらどうなさるんでしょうね」とチクリと針を刺したつもりが笑い飛ばされました。

この作品から、あの典型的な昭和の夫婦像が蘇って来て身震いさせられました。「かしずかせる」のも悪いですが、「かしずく」のもタチが悪いのです！

冷徹な観察により問題の在り処を抉り出す坂井さんの筆力に感服すると共に、自分たち夫婦はまだ間に合うのでは・・・という安堵を覚えました。

これは妻だけで無く夫の、そして、夫婦の「終活問題」です。どの世代にも是非読んでいただきたい一冊です。

▲やや手擦れ感がありますが、割合きれいな状態と思います。

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