アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリは、過剰なまでの完璧主義者で知られている。ピアノと自分自身の状態に異常なまでに神経質に拘り、何かが少しでも自分の基準から外れると演奏会をキャンセルしてしまった。没後数多くのライヴ録音がリリースされるようになったが、生前に遺したスタジオ録音は少ない。すべての条件が理想通りに整っていなければ、自分の世界を創出することが不可能だと考えていたからである。

いくつもの要素が複雑に絡み合って成立している演奏という芸術を、知性派と感性派に二分するなど不可能であるが、周知の通り、ミケランジェリは、音楽誌などで常にその「知性派」の代表格に挙げられる。その磨き抜かれた鉱物のように澄んだ音、ピアノが最も美しく響く点を逃さないタッチ。

確かに、聴いていて胸があたたかさで満ちるような演奏ではないかもしれない。しかし、この過剰なまでに完成されているがゆえにどこか閉ざされた世界とその圧倒的な孤絶もまた、「人間的」なものの一つであり、芸術である。

①1950〜1968年の間に10回もイタリア プラートでのコンサートを行った。その一つである1967年6/28のオールショパンプログラムのコンサート録音。詳しくは写真をご覧下さい。

②映像は、1971年ドイツ・グラモフォンよりリリースされた3枚制作されたレコードの内の1枚より、前奏曲はその7年後に録音された。ミケランジェリは鋭敏な感性の完璧主義なため、彼から完全な承諾を得られた録音は少なく、貴重なものとなっている。

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