①モーツァルト：クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

②ブラームス：クラリネット五重奏曲ロ短調 作品115



ザビーネ・マイヤー(クラリネット)　

ウィーン弦楽六重奏団員

録音：1988年、1990年



現代最高のクラリネット奏者の1人であるザビーネ・マイヤーが、ウィーン弦楽六重奏団団員の高度な合奏を得て、モーツァルト及びブラームスの晩年の傑作を感動的で豊かな音色を聴かせてくれる。これら名曲2曲の性質の違いを演奏の上においてもかなりはっきりと打ち出した素敵な演奏。①での清楚で端麗な表情から,②では一転して渦巻くような激しい情熱が前面に出てくる。



五重奏曲という形態はそもそも魅力的なもの。プラス１が何であっても、大げさすぎず、しかも華やかさがあり大好き。とりわけクラリネットの音色と弦楽のかけ合いがすばらしいクラリネット五重奏曲は言うに言われぬよき組み合わせです。モーツァルトとブラームスのカップリングは定番で、名盤も数々あろうが今回はザビーネ・マイヤーのこれで。いつでも魂の澄み上る幸福感が得られる。モーツァルトの第４楽章の弦の重なりがつやつやしたところなど大変すてき。折あればいつも聴いて楽しんでいる。



モーツァルトが”ウイーンの最初のクラリネット名演奏家”と称賛されたアントン・シュタードラーと出会って、彼の為にあの傑作クラリネット協奏曲K622を贈ったことは有名ですが、この五重奏曲もやはりシュタードラーの為に書いた曲です。楽器は独奏クラリネットに弦楽四重奏（第１、第２ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ）という編成で、特に充実した聴きどころは第１楽章と第４楽章ですが、第２楽章ラルゲットは真に素晴らしい演奏で聴いた場合には、それ以上に感動的だと思います。天国的で彼岸の境地の雰囲気を持つクラリネット協奏曲と比べると、ずっと現世的な美しさやロマンティシズムを感じさせます。この五重奏曲に影響を受けたブラームスも、同じ編成による一大傑作を書きましたが、これこそは現世の人間感情そのものの映し絵でした。この二人の傑作はクラリネット五重奏曲に限らず、あらゆる室内楽曲における最上の名作です。



国内盤、帯無し、盤面傷無し　9



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