・ブルックナー：交響曲第8番
サー・ジョン・バルビローリ（指）
ハレ管弦楽団
録音：1970 年5 月20 日ロイヤル・フェスティヴァルホール

１９７０年５月２０日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホ－ルにおけるステレオ・ライヴ録音で、この２ヶ月後には心臓発作で急逝してしまうバルビローリにとって生涯最後のロンドン公演となった、いわくつきの演奏でもあります。とはいえ、同年に予定されていた初めての日本公演を間近にやる気まんまんだったというバルビローリの気迫はここでも相当なもの。この指揮者ならではの味わい深いカンタービレも健在で、冒頭から“語り”としか言いようのない、まさにバルビローリ節全開の個性的アプローチが聴きものです。いささか非力なハレ管弦楽団も、そんな指揮者に鼓舞され奮い立った健闘ぶりが見事で、終楽章やスケルツォなどで大熱演を聴かせてくれますが、最大の聴きどころはやはりアダージョ。陶然と聴き入るほかはない美しい旋律表現がまことに感動的で、“歌う英国紳士”サー・ジョンの晩年を飾るにふさわしい出来栄えです。終演後のブラヴォーも強烈。ハース版。