チャイコフスキー

交響曲第5番ホ短調 op.64



指揮：セルジウ・チェリビダッケ

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

録音：1991年5月29日



チェリビダッケ晩年の代表的録音のひとつ。遅めのテンポと広いダイナミズム、磨き上げたディテールに精妙なバランスと、チャイコフスキーへの意識が変わる名演。派手さや演奏効果の面に傾きがちなチャイコフスキーの５番ですが、指揮がチェリビダッケとなれば外面的な空虚さは無縁となります。ゆったりとしたテンポと意味深い表情が強大な説得力を生み出しています。徹頭徹尾、完璧な演奏は凄演と呼ぶべき。ミュンヘンフィルもこの境地、よくぞ理解し、掴み取った。そして、もう、あり得ないであろう音楽演奏の記録。



音楽評論家：宇野功芳氏等により語り尽くされた名演。この曲を知っている人なら誰でもが注目する第４楽章のコーダ。尋常ならぬ遅いテンポが最高なのはもちろん、あのトランペット（およびトロンボーン）奏者たち！最後まで、完璧に吹きまくっており、他の演奏では、どうしても腰砕けになって、音量が落ちてしまうラスト直前の和音も、爽快に吹ききっており、念願の夢がかなった演奏。日頃から、ブルックナーで鍛えられた成果と言えるのでしょう。バーンスタインの新盤とともに巨大な、ロマン的な演奏です。もちろん、カラヤンの71年版も、ライヴのような熱い演奏で、イエスキリスト教会の飽和した音響とともに、最高の聞き物ではありますが・・・。



最初から最後まで、悠揚迫らぬゆっくりとしたテンポでもって、堅牢な交響楽の大伽藍が築き上げられてゆく演奏。やはりこれは心揺さぶらずにはおかない名演奏と言っていいでしょう。殊に、第2楽章の後半と、第4楽章のすべてが素晴らしい。大海原に波がうねり、次第に盛り上がるが如く、大空に白雲が湧き、いつの間にかせり出してくるが如く、その壮大な演奏にぐいぐいと圧倒されす。



チャイコフスキーのシンフォニーのはずなのに、時々ブルックナーのそれのようにも錯覚するかという、なんともパワフルでもの凄い演奏。堪能させられること必然の58分です。



国内盤、帯無し、盤面傷無し 12



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