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雨宮蔵人シリーズの連作を３冊まとめて提供します。



花や散るらん

　主人公である雨宮蔵人は元小城藩の藩士でしたが、脱藩し妻の咲弥と娘の香也とともに鞍馬山で隠棲していました。咲弥は肥後藩の名家天源寺家の姫でしたが駆け落ち同様に蔵人についていき、香也は吉良上野介の孫娘という、設定からして既に波乱を感じさせるのです。

　将軍綱吉の生母・桂昌院に従一位の叙位のための朝廷工作をする吉良上野介。大奥ではこれを推し進める綱吉の側室派と、将軍正室との派閥争いが高まり、上野介を失脚させようという陰謀が発動します。山鹿素行の勤王論に心酔する浅野長矩は、上野介が公家を金で縛って、桂昌院への贈位を朝廷に働きかけているという話を吹き込まれ、上野介を誅することが義であると信じるようになって松の廊下で切りかかるのでした。

「なぜ内匠頭は殿中で上野介に刃傷に及んだか」に対するわかりやすい新説を読者に提示していただけるだけでこの物語は十分読む価値があるのですが、ここに蔵人と咲弥を吉良方、赤穂方両方に絡ませて忠臣蔵外伝として読み応えのある物語として膨らませています。



影ぞ恋しき（上下）

吉良家の家人だった冬木清四郎青年が鞍馬の蔵人を訪れ、上野介の息子で諏訪へ配流されている吉良左兵衛に会ってほしいと依頼します。これが縁で香也は次第に清四郎に恋心を抱くようになります。清四郎は主人が流された先で非業の死を遂げたのは、赤穂浪士討ち入りの際に吉良家に冷酷な罪状を決定した柳沢・綱吉の片手落ちだと、将軍に対し仇討ちの毒殺を決行します。そしてこれを後ろで操っていたのは６代将軍となる家宣とその実弟越智右近。「正徳の治」の誕生前夜には「お世継ぎ秘話」があったという秘密を幕府はほっとくわけはありません。清四郎を亡き者にしようと狙う公儀隠密の根来衆、伊賀衆、など次から次へと現れる敵方。娘の許嫁を息子同様と、決死に守るために戦いの場に飛び出す蔵人。

　ラストは蔵人と咲弥の固い夫婦愛にほろりとさせられる名作です。