オールドローズガーデン
梶 みゆき / 井上 茂
定価: ￥ 2500+税

私のバラづくり１２か月。化学農薬を使わないでオールドローズを育てる。すべてのガーデナーと、アームチェア・ガーデナーにささげる、美しい写真とユーモア溢れるエッセイ。
「BOOKデータベース」 より

✦9月　
秋のバラには独特の風情があります。
秋のバラが先はじめました。「ウィンチェスター・カセドラル」や「グラミス・カースル」「ビビ・メイズン」などのイングリッシュローズが咲きはじめると、私の東京の庭は、にわかに華やかさをとり戻すのです。
……。
秋が来ると、四季咲き性であることを忘れずに、ちゃんと花を咲かせるバラたち。私は、春の大きな、華麗な花も好きですが、同じバラが秋に咲かせる、ほんの少し小ぶりで楚々とした趣のある花が、好きなのです。
……
✦10月
　好きな花色の種は保存しておく。
子供の頃歌った『庭の千草』の原語の歌詞は、秋の庭に咲き残った「名残りのバラ」を詠んだものだ、ということをご存じでしたか。しかし、10月のバラは、名残りのバラと呼ぶには、まだあまりにも元気がよすぎます。
東京の庭の、四季咲きのバラたちは、ますます美しく輝いているようです。8月のお礼肥料が力を与えたからでしょうか。「粉粧楼」は、今月にはいって、パールピンクの色合いが、ほんのり濃くなったようにおもえます。

✦オールドローズを
　オーガニックで育てる
世界中で最も「土」を愛した、チェコの作家カレル・チャペックは『園芸家12ヵ月』という本の中で、こう書いています。
「園芸家というものは、花の香りに酔い、鳥の啼きごえに耳をかたむける、とても詩的な、心のやさしい人間だと思っていた。ところが、すこし接近して見ると、ほんとうの園芸家は花をつくるのではなくて、土をつくっているのだということを発見した」
ほんとに、そうなんですね。私はもちろん「ほんとうの園芸家」なんてものではありませんが、それでもいい花を咲かせるために、毎年毎年一生懸命、土をつくっているのです。「きみは土がぼろぼろになるように、満腹するほどたっぷり石灰をやり、あたたかくなるように堆肥をすきこみ、軽くなるように灰をまぜ、空気と日光をしみこませてやらなければならない」と、70年前にチャペックが書いた、そっくりそのままのことを、いま私はやっています。
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