映画をめぐる美術　――マルセル・ブロータースから始める　図録

詩人として出発したベルギー出身の芸術家マルセル・ブロータース（1924-1976）は、1964年頃から美術の領域に身を置き、言語とイメージの関係を扱ったオブジェや写真・短編映画の制作、また公開書簡や出版などの著述活動、さらに美術を取り巻く権威や制度を批判的に検証する虚構性に満ちたプロジェクトなど幅広い創作活動を展開し、戦後美術の転換期に大きな足跡を残しました。
ブロータースが映画を「書く」ための方法として位置づけたことは、これまで「視る」ことへ主に意識を傾けてきた映像表現に対して「読む」という視点を改めて強調し後進の世代の美術家たちに大きな影響を与えて続けており、特に写真やヴィデオ、インスタレーションの手法を用いた表現が急増した1990年代以降の美術動向を理解する上でも、有効な手がかりとなるように思えます。
　展覧会では、ブロータースによる映画に関するテクストやプロジェクトを参照軸とし、そこから引き出される5つのテーマ――「Still / Moving」「音声と字幕」「アーカイヴ」「参照・引用」「映画のある場」――に即して、国際的に活躍する美術家13名のフィルム、写真、ヴィデオ、インスタレーション等の作品により、映画をめぐる美術家の多様な実践を紹介します。

出品作家
エリック・ボードレール　Eric Baudelaire
マルセル・ブロータース　Marcel Broodthaers
ドミニク・ゴンザレス=フォルステル　Dominique Gonzalez-Foerster
ピエール・ユイグ　Pierre Huyghe
アイザック・ジュリアン　Isaac Julien
アンリ・サラ　Anri Sala
シンディ・シャーマン　Cindy Sherman
ダヤニータ・シン　Dayanita Singh
田中功起　Koki Tanaka
アナ・トーフ　Ana Torfs
やなぎみわ　Miwa Yanagi
ミン・ウォン　Ming Wong
アクラム・ザタリ　Akram Zaatari

京都国立近代美術館
東京国立近代美術館