モーツァルト

①ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537 ≪戴冠式≫

②ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595



内田光子（ピアノ）

指揮：ジェフリー・テイト

イギリス室内管弦楽団

録音：1987年6月ロンドン



モーツァルト演奏に定評のある内田のピアノ協奏曲シリーズ第4弾。古典的な造形感をくずさず、透明な叙情性をもって演奏した感銘深い名演です。内田光子のモーツァルトのピアノ協奏曲全曲録音は「わたしの表現意欲を促進させてくれるオーケストラ」と語るテイト指揮イギリス室内管弦楽団のサポートを得て、1985年から録音が開始されました。そのなかからここには、典雅な趣を持つ第26番と、微妙な色調の変化がモーツァルト晩年のこころを語る第27番が収録されています。内田は一分の隙もない感興と閃きに満ちた演奏でそれぞれの作品の特質をあますところなく表現します。このディスクは、日本国内のクラシック・ベスト・セラー・ディスクとなり、日本ゴールド・ディスク大賞アルバム・オブ・ジ・イヤー受賞しています。



第27番は秀逸。内田光子のモーツァルトはその全編にわたって霧がかっており、気分はどことなくすぐれず、常に「うつろ」な表情をしている。要するに長調のナンバーであてっても、目線は短調的で あまり背筋のシャキっとしていない、ぼんやりしたモーツァルトがそこには存在する。そういった雰囲気は、とりわけ第27番の曲想そのものと言えるのではないだろうか？こういうタイプの演奏は26番などには向かないようにも思えたが、聴いてみると22番23番と同じような路線の感動を覚える。決して透明感のあるモーツァルトではない。よく悟り切ったような心の状態を「澄み切った」と表現するが、実は悟った気持ちってそんな純粋なものではなく、清濁併せ呑んで薄く濁った青白い世界が見事に描かれている。



第27番は、いわずと知れたモーツァルトの最後の協奏曲である。協奏曲の天才がこれをもって、この分野との最後の－そうして永遠の－別れをつげることになった音楽といった気持がしみじみとした音の響きとなって流れてくる。



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