【年画】
中国では、新しい一年を迎える春節(旧正月)には、欠かすことのできない縁起もので、門やに飾っている正月飾りの一種。
元々は新年をお祝いする「年画」だったが、色鮮やかで賑やか、めでたい雰囲気の作品が人々の人気を集め、いつしか新年ばかりでなく、結婚式や子供の誕生祝など、その他様々な人々の願いが描かれ、もっとも中国国民の生活に溶け込み愛されてきた民間芸術。山東省にある楊家埠村は、昔より版画つくりで有名な地域。

楊家埠木版年画は、明の頃に発展を遂げ、清の頃にピークに達し、500年余りの悠久な歴史を誇っている。楊家埠村は清の康煕ないし乾隆の時期に、「年画の工房が百軒、年画の種類が千種以上、年画の木版が1万枚以上」という盛況ぶりを呈したこともあり、天津の楊柳青、蘇州の桃花塢と並んで全国の三大年画制作地として人々に親しまれている。楊家埠年画の職人たちは、地元の風土、習俗と伝統的な民間芸術の影響を受け、郷土文化に対する特定の認識や美意識を自然に身につけることになった。その年画作品は、郷土色が非常に濃厚で、文人たちの絵の風格とは大きな違いが見られている。たとえば、簡潔で流暢な線、鮮やかな彩色、鮮明なコントラスト、誇張された造型などはすべて楊家埠年画の特色である。また、楊家埠年画は、象徴や比喩などの手法を多く用いている。たとえば、真っ赤な綿入れの上着に緑色の下着という人物の衣装、子供よりも大きな魚、ぼたんの花などの絵柄は裕福の象徴であり、ハクモクレンの花の模様は永遠の春を意味し、瓶と鞍の図案には平安に対する祈願が込められている。楊家埠の木版年画は、民間の文化・芸術の百科全書の中のイラストの辞書のようなものであり、社会生活のさまざまな側面を端的に反映するものであり、庶民の素朴さ、純真さ、幸福への祈願を表している。
現在、楊家埠村の年間の年画制作枚数は2000万余枚にも上り、その販売ネットは全国、ひいては数十カ国・地域にも広がっており、国内最大の木版年画の制作地となっている。年画を購入する消費者も、これまでの農民を主体とするものから打って変わり、ますます多くの都市の人々が年画を買い求めている。現在、都市部の年画の消費量はすでに農村部を上回り、総売上高の60％を占めるに至っている。