モーツァルト

①ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466

②ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467



内田光子（ピアノ）

指揮：ジェフリー・テイト

イギリス室内管弦楽団

録音：1985年10月ロンドン



モーツァルト演奏に定評のある内田のピアノ協奏曲シリーズ第1弾。まずオケの緻密に練られた響きに始まるが,独奏ピアノが加わると、その洗練されて粒だちの良い音の美しさにはもっと驚かされよう。



名曲名演だらけのこのテイト＋内田光子シリーズの中でもやはりこの一枚は格別なのではないでしょうか。内田さんの本領はやはり陽気な曲より、憂いを含んだ単調にあるのではないかと私には思えます。モーツァルトの本領は長調にこそありー、とはいえ、この20番の美しさにはやり抗えないのが人情というものでしょう。演奏はのっけから気合十分であっというまに全楽章が終わってしまう、という感じです。有名なのは第一・第二楽章ですが、第三楽章も噛めば噛むほど味の出るスルメのような趣があると思います。21番の第二楽章はいわずと知れたあの名曲で、文句なしの美しさ。テイト率いるイギリス室内管弦楽団のしっかりしたサポートぶりもたのもしく、モーツァルトのピアノ協奏曲はどれから聴き始めたらいいのか分からないーという方には迷わずお薦めします。



ロマンティックでデモーニッシュでノーブル。内田光子のモーツアルトの中で最高の演奏の1つ。内田光子は、抑制されコントロールされ、ともすれば理性に傾きすぎととられることもありがち。しかし、彼女は実はとても神経質で繊細でいつ爆発するか分からないほどのテンペラメントを持っていて、だからこそ、それをコントロールするために意識的に理性的、あるいは理知的になっている。この演奏では、理性による抑制が最小限に抑えられ、内田の持つテンペラメントが、モーツアルトのこのきわめてロマンティックで陰影の深い曲に触発されて、我知らず溢れ出て、理知的というよりも内田には珍しく感情の起伏の豊かな演奏になっている。おそらく、内田の内面にはモーツアルトのこのニ短調の音楽に近いものがあるのだろう。そのあふれ出るテンペラメントにはデモーニッシュな仄暗さと豊かなロマンティシズムとしなやかな上品さが満ち溢れている。



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盤面微すれありますが再生問題無し



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