写真２，５は上巻 　写真３，６は中巻　写真４，７は下巻の表紙でカバーは開運画家の村上豊氏が描いて見えます。

　 「唐突だが、生駒山を登る坂はいくつかあり、そのうち古事記にもあらわれるもっとも古い坂が孔舎か坂である。道は生駒山を蛇行してのぼり途中ふりかえれば、いわゆる摂津泉の大眺望が眼下にひらける。

わたし（筆者）はこの展望が日本のどこよりもすきで大和へ行くたびに、大阪をふりかえる。ときに大阪湾が光り、神戸までが見はるかせそうなこともある。

徳川家康にも、その経験があったにちがいない。」

　「さて『城塞』は十七世紀初頭、日本の文化と政治両面の変革期に当たる時代の人物群像をあしっている。信玄に仕え甲州流軍学を極めるだけでなく剣術槍術、組手の名手で比類のない強さを持って雲水の姿をし全国をつぶさに見て歩きいかなる所も問われれば地図にして説明できる能力を得ていた勘兵衛は豊臣全盛の頃甲州赤備え軍団を受け入れてくれた家康への謝意もあって大阪城に嫁ぐ千姫の付き人として大阪城に入り陥落時には千姫を救い出し無事に江戸へ届けるという仕事を引き受けることとなった。

　スパイ小幡勘兵衛は上巻１５８ページ「墨染」の冒頭より颯爽と登場する。家康の謀臣、本田が直ぐに来るように使いを出すと「用があるならそちらから見えられよ」と言い返す勘兵衛。

　「知らぬか、あれが小幡勘兵衛よ」「あれが牢人でありながらどういう理由か秀忠や家康にも時々あって天下万版について話している勘兵衛か」という噂が。

　司馬氏は自らを自虐的に「私は男性専科の作家かもしれない」と言うように勘兵衛が肌の下の血の色が透けるようにすずやかな十四、五の村の小娘に「伽」をさせるのはたばこを旨くすうためだというくだり、「そういうものか」と聞く謀臣、本田に勘兵衛は「そういうものでござる」と平然と答えるあたりは従来の私小説作家からは出てきそうもない女性の描き方、発想でありまた従来の作家とは違った色気が見える」（比較文学者大島正）

　まさにボンド並みのスーパーアクションスター、それに無類の女好き。映画の企画が起きれば大物スターが争って出演したい役柄でしょうネ。

　先般亡くなられたショーンコネリーの哀悼の意を送りたいと思います。　hide