美品です。

(3) 朝露の巻
駿府の人質となっている三河の竹千代は、元服して松平次郎三郎元信と名乗った。やがて恋が芽ばえ、今川義元の姪瀬名姫と結婚、名も元康と改める。永禄3年(1560)5月、義元上洛戦を開始。運命の桶狭間に向かって戦雲はなびく。

(4) 葦かびの巻
今川義元の死は元康の運命を大きく変えた。敗戦にまぎれ岡崎へ帰城、独立の第一歩がいま踏み出されたのだ。信長との同盟もなり、徳川家康と改名、今川の旧領を掌握して勢力を拡げたが、それは妻瀬名姫のはげしい反感と憎悪を買った。矛盾を内にはらみつつ、家康の東海制覇は着々とすすんでいく。

(5) うず潮の巻
元亀3年(1570)、武田信玄がついに上洛戦の火蓋を切った。信長と呼応した家康は、武田軍を捨て身で三方ヶ原に迎え撃つ。この家康の雄図をあざわらうかのように、銃後では妻築山殿(瀬名)と、家臣大賀弥四郎の裏切りの罠が、ひそやかにかけられつつあった。

(6) 燃える土の巻
信玄陣没の風聞に接した家康は、武田勝頼の機先を制して長篠城を手中に収めた。同じ日、越前では信長が朝倉義景の首を実検していた。一方、女の世界では、愛妾お愛の方とお万の方の母性の焔(ほむら)が、築山殿の妬心の妖火が、戦国女性の愛憎の炎となって燃えさかる……。

(7) 颶風の巻
長篠の役は織田・徳川連合軍の圧勝に終わり、武田騎馬軍団は潰滅した。しかし戦国の世は甘くない。信長の疑惑をこうむった家康は嫡子信康を切腹させ、正妻築山殿を斬らねばならなかった。哀しきかな戦国!

(8) 心火の巻
武田勝頼を甲斐天目山にほふった信長は、中国攻略中の秀吉の援軍にみずから出馬する。明智光秀の叛逆!盟友の死は、泉州堺に遊んでいた家康にも最悪のピンチ襲来だ。家康はただひたすら、三河への脱出をはかる。

(9) 碧雲の巻
光秀を討って主君の仇を報じた秀吉はその手柄を盾として、天下取りへの活動を開始した。最大の敵・柴田勝家を倒すにおよんで、武田の旧臣をことごとく随身させていた。家康との確執は日に日につのるばかり。

(10) 無相門の巻
小牧・長久手の地に、秀吉と家康は宿命の対陣に入った。和睦の条件は、家康の次男を秀吉の養子とすることだった。戦いには勝っていると信ずる三河武士団は血涙を噴騰させた。しかし家康は、堪忍の緒を締めてゆく。