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ベートーヴェン：交響曲第５番『運命』、ブラームス：ヴァイオリン協奏曲　チョン・キョンファ、ラトル＆ウィーン・フィル

ラトル＆ＶＰＯのベートーヴェン第１弾《運命》
２０００年１２月デジタル・ライヴ録音。ラトル＆ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲録音がついにスタート。実演では既に３番と９番を取り上げながら、「時期尚早」と録音を見送ったというラトルの厳しいチェックを通過した今回の《運命》、本当に待った甲斐のあるきわめて興味深い、そして刺激的な演奏内容に驚かされます。
　冒頭の《運命》主題から、激しい気迫を見せつつも事大主義とは無縁の厳格な造形感が印象的ですが、舞台の左右に配されたヴァイオリン群を中心に詳細に施されたデュナーミクがもたらす波状的な効果、随所で音響造形の要となっているティンパニの大胆な活用、徹底的なバランス設定が掘り起こす耳なれない音型等々、２０年来の時代考証派の台頭と新校訂楽譜の刊行で激動するベートーヴェン演奏史上、ひときわ個性的な輝きを放つ画期的な《運命》の出現と言えるでしょう。
　カップリングがチョン・キョンファ初のブラームス：ヴァイオリン協奏曲というのも、オマケというには勿体ない組み合わせ。もともと「ラトルと共演したい」とＥＭＩに移籍した彼女ですが、録音は１９９０年のバルトーク以来１０年振り、しかもライヴ収録に満足せず、演奏会後にスタジオ収録し直して万全を期すという妥協のない徹底ぶりはラトルと相譲らずです。