2002年 95ページ

柿右衛門(1世)
かきえもん[いっせい]

[生]慶長1(1596).肥前
[没]寛文6(1666).6. 肥前
江戸時代初期の有田の陶工。赤絵磁器の創始者といわれる。瓦工酒井田円西の子。名は喜左衛門，赤絵の完成後，柿右衛門と改名。元和1 (1615) 年頃，父とともに有田南川原に移住，古唐津風の陶器を焼く。同3年頃，陶工高原五郎七に会い，その指導を受けて染付磁器の改良に努める。また，伊万里の陶商東島徳左衛門が長崎居留の中国人周辰官から赤絵の方法を学んだと聞き，出向いて徳左衛門と協力して工夫を重ね，寛永末年 (43) 赤絵の焼成に成功したという。作品は鉢，皿，徳利，蓋物，水差し，花瓶，置物などで，光沢ある乳白色の素地に赤，緑，金，黄，青，紫，黒などの彩釉を用い，繊細な筆致で各種の絵文様を上絵付けした濁手 (にごしで) と，半透明な染付磁器の上に上絵を焼付けた染錦手とがある。なお，正保年間 (44～48) から彼の作品はヨーロッパに輸出され，各地でその写し (→柿右衛門様式 ) が作られるなど，世界の陶磁界に大きな影響を与えた。

柿右衛門
かきえもん
江戸時代初期より現代まで続く有田の陶工酒井田柿右衛門の家系。またその窯で作られる色絵磁器をもいう。赤絵磁器の創始者といわれる酒井田柿右衛門 (柿右衛門〈1世〉 ) 以来，柿右衛門の系統は現在 14世まで続いているが，2世から5世までは1世の子といわれ，作品のうえで1世との区別は困難。また5世の弟の酒井田渋右衛門も，この派の名工である。
出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

後記
井村美術館では、 有田で焼成された初期の色絵 磁器から、 最盛期 (17世紀末)にヨーロッパの王 侯貴族が熱狂的に収集した古伊万里、 柿右衛門を 中心に里帰りさせてまいりました。 その活動の中、 私の恩師である今は亡き氷竹威先生、 十三代柿右 衛門先生、 そして十三代今右衛門先生とお話する 中で芽生えた思いは、明治以降、復興された今右 衛門と柿右衛門の陶芸に対する情熱を感じさせる 作品の研究でした。
意外なことに、この時代の作品の研究があまり なされておらず、 曖昧になっている事が多い事に 気づきました。 少しでも有田焼き愛好者のお役に 立ちたい、 また有田焼きファンが少しでも増える ことを願い、研究を重ねてまいりました。 次号に 今右衛門を、 そしてその後も、近代柿右衛門と今 右衛門の執筆を続けて行きたいと考えておりま す。 また、この場をお借りして、色々な情報・資 料をご提供くださった皆様に、厚くお礼申し上げ ます。
井村美術館は京 下鴨神社の西側に 芸の復興に尽力 ない珍しい作品 展示している。

表紙小傷、ややすれ。もちろん読む分には問題ありません。

なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。