1986年　厚さ約0.7cm

60周年記念展に際して
今年は国展の60回記念展が催される。 あの大東亜戦争の最中でも、敗戦の昭和20年以外 は休まず会を続け、翌21年展は、日本の戦後最初の美術展となる等、国展は美事な業績を 残して来た。
工芸部は昭和2年に、富本憲吉、浜田庄司、バーナード・リーチ氏等により創られたが、 私が国展をはじめて見たのが丁度その年で、その時見た、芹沢銈介作の杓子菜の壁掛は、 魅力溢れ、いつまでもその前に立ちつくした。
その後私も工芸の道を志し、昭和8年はじめて織物を出品し、受賞、9年には会友とな った。その頃は、会員友合せても13名程であったので、広い会場を埋めるのには、各自数 多くの作品を作らねばならなかったが、そのために、 仕事の内容、主張が出し易く、会と しての面白さがあったが、やがて工芸部の中に、美術工芸的な仕事をされる富本派(一部) と、日常の生活に手厚く仕える事こそ工芸の本筋と考える民芸派(二部)が生じ、昭和12年、 日本民芸館完成と共に、 二部の会員友は退会した。 その後の戦中の事は北京に居たのでよ く知らないが、敗戦後工芸部は解散、 富本氏は京都に移られた。翌22年正月、 梅原龍三郎 河井寛次郎、 氏から工芸部再建の要請があり、旧二部のメンバー、 柳宗悦、 浜田庄司、 芹沢銈介、 外村吉之助、船木道忠諸氏と私、その他十余名で、22年の21回展から再出発した。 「用と美」 が私達の念願であった。 その後年毎に参加者が増し、これまでに150人程が関係 されたが、死亡者、 退会者50余、 現在98人程になっている。 これに一般出品者を加えると 200人程の会になり、部屋の都合で1人1点しか採れず、 会の主旨が出し難くなった、より 良い運営の方法はないか、一時課題を出して、皆で競作するようなことも考えたことがあ るが、 今年の会を見て、もう一度皆で相談する必要があろう。 大所帯になった会の、つら い大きな問題である。

表紙小傷。ページ小黄ばみ。

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