昭和61年　130ページ程度で38Pまでカラー

はじめに
東洋美術の主題としての山水、人物、花鳥などは、これまでさまざまな視点から取り上 げられてきました。それらは自然と人間を結びつけ、そこに美を求めて表わされたもので した。それに対して、今回の展覧会で取り上げた「龍虎」は、自然を超えた大きな力を表 わすことに始まり、やがて東洋の造形の世界に君臨し、その世界観の形成に重要な役割を 果してきたものであったと申せましょう。絵画に描かれたり、工芸品の文様として用いら れるだけでなく、宗教的なものから日常の生活用具の中にまで、龍と虎はさまざまな形で 用いられております。

- 神秘的な力をもつ動物として整餐文の中に完成した龍と虎が、愛らしい姿になるまでの 流れを、室町時代の水墨画に焦点をあてながら御鑑賞頂ければ幸甚に存じます。 この展覧会に御協力や御出品を賜りました各美術館や御所蔵家と、企画段階から御指導 賜りました慶応義塾大学教授衛藤駿氏に、深甚の感謝をあらわす次第であります。
昭和六十一年秋
根津美術館
日本経済新聞社

表紙 小傷。ページ小黄ばみ。

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